館長の三木によると、直島新美術館はアジアの現代アートを紹介する美術館として機能するとともに、ほかのベネッセアートサイト直島の恒久的な美術館とは異なる、定期的な展示替えやトークイベント、地域住民とともにワークショップを実施するなどといった、変化のある場を目指していくという。そのような方針のもと、こけら落としとして開幕したのは「直島新美術館 開館記念展示―原点から未来へ」。日本、中国、韓国、インドネシア、タイ、フィリピンなどアジア地域出身の12組による新作や代表作が、地下2階、地上1階の複数のギャラリー空間やカフェといった各エリアで紹介されている。
まず来館者を迎えるのは、エントランス傍に展示される下道基行とジェフリー・リムによる「瀬戸内『漂泊 家族』写真館」だ。ふたりは直島への漂流物からピンホールカメラを制作し、直島の風景とともに住民を撮影。同館が方針として掲げた「地域とのつながり」を表す重要な作品となっている。

ギャラリー1では、マルタ・アティエンサ、ヘリ・ドノ、インディゲリラ(ヘリ・ドノとの合作)、パナパン・ヨドマニーらによる、現代アートと伝統的なアートのつながりを示すような作品をそれぞれ展示している。とくにベネッセアートサイト直島がアジアの現代アートコレクションをするきっかけとなったインドネシアの作家 ヘリ・ドノによる10枚組の大作絵画は、数十年にわたる作家の画業とその背景にある自国の近現代史が読み取れるものとなっている。


続くギャラリー2では、韓国のソ・ドホによる代表的なシリーズ「Hub」を紹介。ソウルやニューヨーク、ロンドンなど、作家自身が暮らしてきた家の玄関や廊下などを布で再現したこのシリーズに、直島の民家の廊下部分を新たに加えた8連作を展示している。
